理学療法

深部感覚障害に対する臨床での治療アプローチ方法

三好 裕也

日本の理学療法士・ピラティスインストラクター。藤沢市の整体ピラティスサロン「Miyoshi整体サロン」を運営。YouTube登録者8万人突破! →さらに詳しいプロフィールはこちらをクリック

深部感覚障害に対する評価は行っているけど、深部感覚障害に対する治療は具体的に行っていないセラピストは結構多いんじゃないでしょうか?今回は深部感覚に対する理解を深めて、臨床の落とし込み方を紹介していきたいと思います。深部感覚障害に対する治療アプローチで困っている方、悩んでいる方がいましたら是非チェックしてみてください^^

 

深部感覚とは?

 

深部感覚とは、骨、筋肉、筋膜、腱、関節、靭帯に対する接触刺激や、運動することによって起こる感覚で、手足の相対的な位置や、運動の方向がわかる運動感覚、振動させた音叉を骨に近い皮膚の上で当て、振動しているかどうかわかる振動覚、骨膜、筋、腱などに強い圧迫が加わり痛みを感じる、深部痛覚に分けることができます。

 

深部感覚があることによって、自分の手や足がどの位置にあるのか、どの方向に動いているのかといったことが視覚を通さなくても分かるようになっています。筋肉の伸び縮み具合や関節の曲がった角度、床に接している感覚などを感じ取って、その感覚から体の位置、運動の方向を探っているんです。

 

深部感覚の分類

 

  • 運動感覚→運動覚(運動の方向)、位置覚( 筋、骨、関節の位置)
  • 振動覚
  • 深部痛覚

 

 

深部感覚の受容器

 

  • 筋紡錘
  • ゴルジ腱器官
  • 関節受容器
  • 侵害受容器

 

 

筋紡錘とは?

 

筋紡錘は、筋肉の伸び縮みを感知する感覚受容器です。ゴルジ腱器官は、筋・腱移行部や腱に存在し、筋肉の張力を感知する受容器。これらの受容器の働きによって、筋肉の伸び縮み、関節の角度、侵害刺激に対する痛みを感知します。

 

 

深部感覚障害の原因

 

頸髄症等、中枢性の障害

 

深部感覚障害は、脳卒中や頸髄症等、中枢性の障害によって起こります。

 

筋、腱等の受容器→脊髄→脳

 

脳卒中や頸髄症では、脊髄、脳に障害があるため筋肉や腱で感知した刺激をうまく脳に伝えることができなくなっています。感覚を伝える伝導路がうまく機能していない状態になっています。

 

小脳では、無意識下で筋緊張のコントロールを行っているので、小脳につながる伝道路の一部が障害されていると筋緊張がうまくコントロールできなくなり、主動作筋と拮抗筋のバランスが崩れてしまいます。そのため、立位、歩行時に膝折れが生じるといったことが起きてきます。

 

深部感覚障害の評価

 

運動感覚

 

一方の上肢、下肢を他動で動かし、どのように動いているか把握できるか確認していきます。

 

位置覚

 

  • オリエンテーション
  • 閉眼してもらう。
  • 他動で一方の四肢を動かす。
  • その位置を言葉で言わせるか、反対側で関節の動きを真似させる。
  • 数回検査を行い、何回正しく行えたか記載。

 

 

運動覚

 

  • オリエンテーション
  • 閉眼させる。
  • 手指、または足趾を持ち、上下に動かす。
  • どちらに動いたか答えさせる。
  • 数回行い、何回正答したか記載。

 

動かす範囲や速度で刺激が変化するので、はじめはゆっくりと行い、徐々に難易度をあげて評価する。

 

関節覚は四肢末端ほど侵されやすいので、末端が障害されている場合大関節も評価しよう。

 

 

オリエンテーションの伝え方

 

慣れないうちは、感覚検査の方法やオリエンテーションの伝え方って難しいですよね。簡単な方法を紹介します。

 

  1. この検査は、〇〇さんの感覚に問題がないかどうか確認する検査です。
  2. まずは目で見て確認しましょう。(片方の足を膝を立てたり、少し伸ばしたりします。)
  3. 私が動かしたように、反対の足で真似するようにしてください。
  4. 一度目で見ながらやってみましょう。(目で見てもらいながら確認)
  5. (これでできなければ、認知機能の低下、失語症、その他高次脳機能の問題がある可能性あり。)
  6. それでは目をつぶって、これから検査をしていきますね。
  7. (閉眼状態で検査していきましょう)

 

 

深部感覚障害に対する治療アプローチ

 

視覚のフィードバックの利用

 

深部感覚障害は、筋肉や関節の感覚が鈍くなっていて、視覚のフィードバックなしに自分の手や足がどのように動いているのか分からなくなっている状態です。視覚のフィードバックなしではわからない状態から、視覚のフィードバックなしでもわかるようにしてあげるということが必要になります。

 

 

正確なフィードバックがかかるように調整

 

深部感覚障害に対するアプローチをする前に行っておくべきことがあります。関節可動域制限や筋緊張異常をできる範囲で軽減し、正しい運動の方向や筋肉の伸張の程度等、フィードバックが正しく入りやすい状態にしておくことが大事です。

 

正常な運動を通して、感覚をフィードバックしていくっていうことが基本になります。

 

CKCでの運動

 

荷重下での運動のほうがフィードバックが入りやすいので、CKCでの運動が可能な方であれば、座位においての運動であったり、立位での運動を通して感覚をフィードバックしていきます。はじめは、鏡を見ながら運動をしてもらって、視覚のフィードバックを入れながら行います。次に、鏡を見ないで運動をしてもらって運動したあとに鏡を見て体の動きや手足の位置を確認してもらいます。

 

触覚刺激も利用

 

患者さんは、鏡を見て確認すると、自分が思っていた位置とは全然違う!っておっしゃると思います。そのギャップを埋めていく作業をしていきます。ハンドリングで誘導し触覚刺激も入れながら、正しい動作や運動はこういう風に行っていくということ、左右対象のときはこういうふうに行うということをフィードバックしてあげましょう。

 

 

運動を言語化

 

関節がどのぐらい曲がっているのか、どのくらい左右差があるのかといったことを患者さんに言語化してもらうのも良いと思います。

 

難易度の設定

 

関節可動域制限や筋力低下があると、動作がより難しい状況になると思いますが、深部感覚障害が加わると更に難しくなります。そういった状況で、難易度の高い動作や運動を指示してしまうとただし運動を行うことができません。はじめはできるだけ難易度を下げた運動を行ってもらい徐々にレベルを上げていきましょう。初めは自動介助で代償のない運動をおこなえるようにしていただけるといいと思います。

 

難易度の低い運動→視覚のフィードバック→運動の再確認→ギャップを埋めていく

 

このような流れでアプローチをしていくと良いと思います。

 

 

深部感覚障害に対する治療アプローチ まとめ

 

  • 視覚、触覚等、深部覚以外の刺激を多く利用していく。
  • 筋短縮や拘縮は改善し、正常なフィードバックがかかるように。
  • CKCによる刺激入力が有効
  • 言語化も有効
  • 難易度は簡単なものから徐々に上げていく。

 

 

今回は、深部感覚障害に対しての評価や治療アプローチを簡単にまとめました。深部感覚障害に対する治療アプローチで悩んでいた方がいましたら今回紹介したポイントを確認して試してみてください。今回紹介したポイントを試して深部感覚障害のある方に対して治療し、患者さんがより楽に生活することができることにつなげていってください^^

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三好 裕也

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