理学療法

股関節内転筋の痛みの原因と改善方法

三好 裕也

日本の理学療法士・ピラティスインストラクター。藤沢市の整体ピラティスサロン「Miyoshi整体サロン」を運営。YouTube登録者8万人突破! →さらに詳しいプロフィールはこちらをクリック

理学療法士の三好です。今回は、股関節の内転筋についてです。臨床やってると、股関節内転筋に痛みを訴える患者さんが多くて、改善することができれば痛みなく動作を行えるようになって患者さんを楽にすることができる場面がよくあると思います。でもなかなか痛みが改善できない、、、って人多いんじゃないでしょうか?今回は、痛みの原因とその改善方法を紹介しますので、ぜひ臨床で生かしてみてください!

 

股関節内転筋とは?起始・停止・作用・神経支配

 

 

内転とは、関節を身体に向かって内側に動かす運動です。

 

股関節内転筋の分類

 

  • 大内転筋
  • 短内転筋
  • 長内転筋
  • 恥骨筋

 

さて、一つずつ筋肉について学んでいきましょうか。

 

大内転筋

 

 

  • 起始 恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節
  • 停止 大腿骨粗線内側唇、内側上顆の上方の内転筋結節
  • 支配神経 閉鎖神経(L2〜4)、坐骨神経脛骨神経部(L4,5)
  • 作用 股関節内転、屈曲、伸展

 

起始は筋肉の始まりの部分で、大内転筋の場合、恥骨の下枝。恥骨下枝は恥骨なので、骨盤の前側ですね。骨盤の前側の一番下の部分につきます。坐骨は骨盤の後ろの一番下です。だから、骨盤の前側と後ろ側両方から繋がっていることになります。

 

そこから筋肉が始まって、大腿骨の中間部分と大腿骨の一番下の内側につきます。

 

このつながりから言えることは、大内転筋は骨盤の前にも後ろにも繋がっているので、股関節を前に動かすことにも、後ろに動かすことにも作用するということです。歩くときには股関節を前に振り出すときにも、股関節を後ろに蹴りだすときにも使うということですね。

 

閉鎖神経って?

 

標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第2版より

 

標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第2版より

 

腰椎の2〜4から始まって、主に股関節を閉じる筋肉を支配しています。支配する筋肉は外閉鎖筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、恥骨筋、小内転筋、薄筋です。大腿内側の皮膚の知覚も支配します。

 

筋肉の深さも確認しよう

筋肉の単独の繋がりだけでなく、筋肉が身体の表層から見てどこに位置しているのかその深さを知っていることも大事です。特にセラピストとして触診をできるようにするためには大事。

 

大内転筋はどこに位置しているのかっていうと、前面から見ると長内転筋、薄筋の下です。後方から見ると、半腱様筋、半膜様筋の内側になります。解剖学のテキストやヒューマンアナトミーアトラスなんかのアプリを使ってよく見てみると良いです。

 

長内転筋

 

 

  • 起始 恥骨筋結節の下方
  • 停止 大腿骨粗線内側唇の中 1/3
  • 支配神経 閉鎖神経 L2,3
  • 作用 股関節内転、屈曲、外旋

 

簡単にいうと、長内転筋は、恥骨から大腿骨の内側でやや後方についています。だから、主には足を内側に閉じる時と前に振り出すときに使います。大腿骨のやや後方につくため外旋の作用もあります。大腿骨を外側にひねる働きですね。

長内転筋は、縫工筋と内側広筋の下に位置します。

 

恥骨筋

 

 

  • 起始 恥骨節
  • 停止 大腿骨上部の恥骨筋線
  • 支配神経 大腿神経(L2,3)
  • 作用 股関節内転、屈曲、外旋

 

恥骨筋は腸腰筋と長内転筋に挟まれるようにして走行しています。その下には短内転筋もあります。長内転筋と同じく恥骨から大腿骨のやや後方につくため外旋の作用もあります。

 

大腿神経とは?

 

 

腰椎の2,3,4から分かれて、大腿四頭筋、腸腰筋、恥骨筋、縫工筋を支配する神経。

 

内転筋の役割まとめ

 

内転筋は主に股関節を閉じる方向に動かす働きを持ちます。

 

それとあわせて股関節を屈曲する方向のサポートをする働きがあります。大内転は骨盤の後ろにもつくので伸展のサポートもします。歩くときの振り出しや蹴り出し、片脚で踏ん張る時に外側の力に対してバランスを取るために内側の力を使うことで片脚立ちを可能にしたりしています。

 

股関節内転筋が痛くなる原因、理由

 

内転筋の過緊張

 

過緊張が起きると、筋線維に虚血が生じるので痛みを感じやすい状態になります。圧迫すると余計に虚血が生じますし、侵害受容器も興奮しやすい状態なので軽い刺激でも痛みを感じます。

 

過緊張とは、筋肉の収縮が持続的に過剰に起きている状態です。過剰にっていうのは、例えば作用する動きの主動作筋や拮抗筋(反対の作用を持つ筋肉)の緊張に対して、強く緊張している状態です。

 

腸腰筋の緊張低下

 

内転筋の場合だと、内転筋が過緊張を起こすことで、拮抗筋の中臀筋の緊張が低下しています。内転筋が過緊張となっていることで中殿筋が筋力を発揮しにくい状態となってしまっていることが多いです。あとは股関節の屈曲に働く腸腰筋の緊張が低下している場合も内転の過緊張が生じる場合が多いです。これは腸腰筋の代償を内転筋で行っているためです。

 

本来、バランスよく働いて適度に保たれるはずの筋緊張が何らかの原因でバランスが崩れて過緊張を起こしている状態になります。

 

股関節内転筋の痛みを改善する

 

ホールドリラックス、等尺性収縮によるⅠb抑制の利用

 

一つは、ホールドリラックスですね。等尺性収縮を使って緊張を落とします。何で等尺性収縮で緊張が落ちるかというとⅠb抑制という働きを利用しているからです。筋腱移行部に多く存在するゴルジ腱器官は腱が伸張されると興奮して筋を弛緩させるように作用します。関節を動かさずに筋を収縮させると筋腱移行部が伸張されてゴルジ腱器官が興奮するんですね。

 

内転筋のストレッチ

 

自動運動が難しい方に関しては単純に持続ストレッチで良いです。これも同じで伸張刺激を与えることでⅠb抑制を利用して緊張を落とします。筋が短縮している場合、伸張痛が起きることもあるので伸張の程度に注意が必要です。

 

10秒を3セットに分けて、合計30秒以上かける。これがおすすめ。

 

おまけ 薄筋のストレッチ方法を動画で紹介!

 

 

内転筋のリリース

 


徒手的にやるのであればリリースしても良いと思います。内転筋を直接持って筋繊維に対して垂直に動かしてあげたり、筋繊維をほぐすようにマッサージしてあげたりしましょう。筋肉が柔らかくなった感覚があるところまで行いましょう。

 

拮抗筋の筋力トレーニング

 

緊張を落とした後に、主動作筋、拮抗筋の筋収縮運動を行って、根本の原因を改善することが大事になります。根本の原因が改善されていなければ、一時的に緊張を落としても同じように身体を使っていてはまた再発します。再発しないように身体の使い方を変えることが一番大事なんですね。

 

 

股関節内転筋の痛みを改善するエクササイズ、筋トレ

 

筋緊張とは、持続的に筋収縮が起きている状態です。だから、継続的に筋緊張を高められるように運動を習慣化することが大事になります。

 

例えば、仰向けに寝た状態でももを上げる運動を行うことで腸腰筋を鍛えます。それを毎日15回ずつでも継続する、させることが大事になります。

 

腸腰筋、中殿筋のトレーニング

 

腸腰筋、中殿筋、大殿筋、コアを一度に鍛えることができるエクササイズ

 

 

 

拮抗筋である中殿筋の筋力トレーニング

 

股関節の外転運動、足を開いて中臀筋を鍛える運動も継続することで中臀筋の持続的な筋収縮を起こし、筋緊張を高めることにつながります。

 

 

股関節内転筋、外転筋のバランス調整

 

 

股関節内転筋の痛みを改善する方法 まとめ

 

  • 股関節内転筋は主に内転、屈曲に作用
  • 大内転筋のみ伸展にも作用
  • 痛みは内転筋の過緊張で起きていることが多い
  • 等尺性収縮やストレッチで緊張を抑制
  • 作用する運動の主動作筋、拮抗筋の緊張を高める
  • 運動を習慣化することが大事

 

 

内転筋の痛みを改善するためのおすすめの書籍

 

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