前十字靭帯損傷OPE後の理学療法の進め方!術後から競技復帰までの流れを細かく解説!


理学療法士の三好です。今回は、前十字靭帯損傷OPE後の理学療法について、理学療法士としてACLの患者さんを担当するのは初めての方とか、まだ経験が少ない方に向けてまとめましたのでACLの患者さんに対する理学療法の進め方で悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。

 

 

スポーツ医学とアスレチックリハビリテーション

 

スポーツ医学とは?

 

まずは、スポーツ医学について。

 

スポーツ医学においては、運動学、バイオメカニクス、運動生理学、運動生化学、スポーツ栄養学、スポーツ心理学、障害学、戦術学などが含まれ、競技の理解も必要とされます。

 

病院で働いている理学療法士の多くが用いている理学療法だけでは、スポーツ選手の要求を満たせない面が多いです。病院での患者さんに対する理学療法の多くは、基本動作、ADL動作の獲得に向けた評価、治療となっています。スポーツ分野においては、それよりももっと広い範囲で、スポーツに対応した評価、治療が必要になります。

 

スポーツに携わる機会の少ない病院の理学療法士にとっては苦手な分野になると思います。

 

アスレチックリハビリテーション

 

アスレチックリハビリテーションとは、スポーツに復帰するまでの運動機能の確立するためのリハビリです。

 

日常生活動作を確立するまでのリハビリは、メディカルリハビリテーションでアスレチックリハビリテーションとは区別されています。

 

アスレチックリハビリテーションを行う理学療法士に求められる能力

 

  • 競技への知識
  • 競技で求められる運動機能とは何か?の理解
  • 再発予防の視点
  • スポーツ動作を含めた動作分析能力と問題点の把握

 

 

まずは、競技への知識を深めることが必要です。バスケットボールをきっかけにACL損傷をした患者さんを担当するのであれば、バスケットボールについて勉強しましょう。バスケットの試合を観戦しましょう。バスケットボールを行うのに必要な動作、トレーニング等を知ることが必要です。

 

人体に加わる外力とスポーツ外傷・障害の理解

 

ここで、アスレチックリハビリテーションを行う際に必要な考え方を紹介します。

 

スポーツ外傷、障害ともに人体にかかる負荷がその原因となります。理学療法士として、その負荷がなぜ起きたのか?原因を追求して、その負荷を減らし修復していくことが必要になります。

 

人体が負荷を受けた際の単位面積当たりの荷重のことを、応力と呼びます。

 

応力は主に5つに分けられます。

 

  • 引っ張り応力
  • 圧縮応力
  • 剪断応力
  • 曲げ応力
  • ねじれ応力

 

アスレチックリハビリテーションでは、これらの応力が人体にどのようにかかっているのか?を把握することが必要になります。

 

 

前十字靭帯(ACL)について

 

前十字靭帯とは?後十字靭帯とその機能、役割は?

 

・標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第2版より引用

 

 

前十字靭帯は、脛骨の前顆間区から出て、上後方に向かい大腿骨の外側顆の内側面後部に後方に付着し、脛骨の前方滑脱を防いでいます。

 

後十字靭帯と合わせて、膝十字靭帯と呼ばれ、膝伸展時にもっとも緊張します。特に最終伸展時にストレスがかかりやすいと言われています。

 

膝関節屈曲時には、緊張している膝十字靭帯の誘導により下腿の内旋が可能になる。下腿の外旋より内旋の方が可動域が狭いが、下腿の内旋の際、膝十字靭帯が互いに巻きつくことによって過度な内旋を防いでいる。外旋する際は、膝十字靭帯は互いによりほぐれます。

 

前十字靭帯の手術、OPE式について

 

  • BTB法 (骨つき膝蓋靱帯を用いる)
  • STG法 (半腱様筋腱、薄筋腱を多重折りにして用いる)

 

 

BTB法は,移植片の両端が骨組織であり, 移植片と移植片を固定する骨孔は骨同士で修 復される.そのため両者の修復は骨のリモデ リング過程に沿ってなされ,リハビリテーションを進行する際の目安と出来ることや,将来的にも解剖学的に安定した状態で修復する ことが予測される方法である.

1990年に(accelerated rehabilitation ; 加速リハ)を提 唱し,早期競技復帰を願うスポーツ選手には 非常に優れた方法と思われた.しかし,その 後加速リハやBTB法による術後に骨孔の拡 大や移植片の緩み,移植片を採取した膝前面 の疼痛や膝関節伸展制限などの合併症が報告されている.

一方,STG法は,軟組織の腱を硬組織の骨 に固定する方法であり,移植腱と骨の修復に 要する期間および機序は,完全には明らかに されていない.そのため,BTB法で再建した 場合と比較すると,リハビリテーションや日 常生活およびスポーツ活動への復帰がやや遅延することや,移植腱と骨界面に形成された 線維性介在物により移植片の緩みが生じ,こ れが原因となって関節内に炎症を誘発するこ とが懸念される.しかし,移植片の採取に伴 う合併症はほとんど見られないことから,トップレベルのスポーツ選手ではSTG法で行 われることが多くなっている.

・前十字靭帯損傷 田中忍 より引用

 

 

前十字靭帯(ACL)手術、OPE後の理学療法

 

 

手術後のリハビリにおける注意点

 

手術後は、ACLにストレスをかけすぎないように注意する必要があります。

 

前十字靭帯(ACL)にはどんな時にストレスがかかりやすい?

 

  • 膝関節最終伸展時
  • 膝関節伸展、脛骨内旋時
  • 大腿四頭筋の収縮でストレス増強
  • ハムストリングスの収縮でストレス軽減

 

 

 

膝の伸展でストレスがかかるため、早期から大腿四頭筋の積極的な訓練を行うことは避けましょう。はじめは機能改善よりも患部外のROM訓練、筋力維持訓練を行い、機能維持を優先していきましょう。

 

早期の荷重で弛緩性が強くなる

 

術後早期に荷重をかけすぎると、ACLが緩んでしまう可能性があるため、早期は無理せず徐々に荷重をかけていきましょう。

前十字靭帯(ACL)手術後のリハビリの進め方

 

手術後から1週まで

 

  • RICE処置
  • ROM訓練
  • 患部外筋力強化訓練

 

この時期は炎症していて患部周囲の腫脹、熱感が強い状態ですので、アイシングを主体としたRICE処置を行っていきます。それと合わせて、ROM訓練を徐々に始めていきます。

 

筋力維持目的でよくクワドセッティングをやってもらうことがあると思いますが、ACL再建術後は大腿四頭筋の収縮により術部にストレスがかかりますので早期のクワドセッティングは避けましょう。

 

手術後1週〜

 

  • ROM訓練
  • 筋力強化訓練 レッグカール レッグプレス スクワット 患部外
  • 荷重訓練 部分荷重

 

この時期も同様に過度な膝の伸展運動は靭帯を引き伸ばし、損傷するリスクがありますので伸展域での訓練は避けましょう。膝関節屈曲70°以上であれば、脛骨の前方引き出し力は生じないと言われていますので大腿四頭筋の筋力強化はこの角度を意識して行うと良いです。

 

ROM訓練

 

この時期は腫脹、熱感が強く関節内圧が高い状態ですのでなかなか可動域は改善しにくいです。早期にROMを改善したいという気持ちもあると思いますが、無理せず徐々に行っていきましょう。

 

筋力強化訓練

 

レッグカール

 

レッグカールは伏臥位にて膝を屈曲して主にハムストリングスの筋力強化を狙ったトレーニングになります。ハムストリングスの単独収縮は膝屈曲角度にかかわらず、脛骨の後方引き出しに作用しますので積極的にトレーニングを行っていきましょう。

 

半腱様筋腱を使用した再建術の場合、ハムストリングスが収縮する際にけんの採取部に疼痛が生じることがあります。この場合は疼痛が軽減するまで股関節の伸展動作を通してハムストリングスの筋力強化を行っていきましょう。

 

 

手術後2週〜

 

  • ROM訓練
  • 筋力強化訓練
  • CKCでの運動 ランジ スクワット 片脚立位

 

ROM訓練

 

徐々に腫脹、熱感が落ち着いてきますので、ROM訓練も自動から他動に切り替えていきます。術前にリハビリが入っていない患者さんや、受傷からOPEまでの期間が長い患者さんの場合、ROM制限を改善するのに時間がかかりますので、腫脹が軽減していきたら積極的に行っていきましょう。

 

ランジ、スクワット

 

痛みに応じて徐々に荷重量を増やしてCKCのトレーニングを行なっていきましょう。

 

 

手術後3ヶ月〜

 

再建ACLが通過する大腿骨、脛骨とも骨孔の骨化がみられる時期。この時期から積極的に訓練を進めていく。ジョギングや軽いフットワーク練習を開始していこう。

 

  • ジョギング開始
  • 基本的なフットワーク
  • 筋力強化訓練
  • 動作指導
  • 再発予防教育

 

ジョギングははじめは15分程度から様子をみていく。痛みの有無やジョギング時のアライメントをチェックしておこう。はじめは動作観察が難しいと思うので、片脚スクワット、ランジ、ニーベントウォーク等の動作を通して動作の特徴を捉えよう。

 

再発予防の視点からいくと、動作をする際に股関節が内転、内旋し、Knee inしないかどうかを確認する。Knee inするようであれば、その理由を考えよう。

 

基本的なフットワーク

 

スポーツによって違いますが、バスケットボール選手の場合。

 

  • 減速動作 ハーキーステップ
  • 横の動き サイドステップ
  • ターン
  • ストップ ジャンプ動作

 

この辺りを中心に動作のチェックをしていきましょう。動作の際にKnee inがないかをみていきます。頭部から足部までアライメントをしっかりとチェックしどこに問題があるか把握していきます。

 

問題点として筋力低下が上がると思いますが、それ以外に運動学習も必要になります。鏡を利用して視覚のフィードバックを入れながら動作指導を合わせて行っていきましょう。

 

再発予防教育

 

この時期から積極的な訓練を行っていきますので、部活動などでチームのトレーニングにもできる範囲で参加していくと思います。しかし、再損傷のリスクはありますのでどのような動作をすると前十字靭帯にストレスがかかりやすいのか、どの動作はまだ行ってはいけないのか、再損傷のリスクがある時期であるといったことを患者さんに確実に伝えましょう。

 

手術後4ヶ月〜競技復帰まで

 

  • ランニング開始
  • フットワークドリル
  • 筋力強化訓練

 

再発予防のための筋力強化訓練を継続しながら、フットワークは応用的なものへ進めていきます。チームのトレーニングへ復帰させていきましょう。

 

 

Knee inの原因、なぜ Knee inするのか?

 

股関節外転、外旋筋力低下

 

ニーインの原因としてまずあげられるのが、股関節外転、外旋筋の筋力低下です。特に大殿筋、中殿筋、深層外旋筋の筋力が低下しているとランジ動作等で膝を屈曲する際に股関節を中間位に保持できず、内転、内旋し膝が内側に入ってしまいます。

 

下腿の内旋制限

 

大腿骨に対して脛骨が外旋位で固定されてしまい、内旋できない状態です。脛骨が大腿骨に対して内側を向いているので膝は内側、つま先は外側を向いてしまう状態となります。

 

足関節の背屈筋力低下、背屈制限

 

背屈筋力が低下し、背屈に制限があると、足関節は回内方向に代償します。足関節の回内とは、踵骨が内側に倒れる状態なので膝が内側に入る運動連鎖が起こります。そのため、足部が背屈位になる際にニーインしてしまいます。

 

 

腹部筋力低下

 

腹部の筋力が低下することにより、腰椎が前弯、骨盤が前傾します。それに伴って股関節は内転、内旋し膝は外反します。腹部が弱いことで骨盤からの運動連鎖が生じてニーインを引き起こします。

 

 

前十字靭帯(ACL)手術後の可動域制限の原因

 

 

 

前十字靭帯損傷される患者さんの特徴

 

  • 股関節外転、外旋筋力が弱い
  • 腹部筋力が弱い
  • 過度な腰椎前弯、骨盤前傾位
  • 足関節背屈筋力低下、背屈制限

 

 

前十字靭帯(ACL)損傷術後のリハビリのポイント まとめ

 

最後にまとめです。

 

  • アスレチックリハビリテーションへの理解
  • 競技への理解
  • スポーツ分野における動作分析能力
  • 再発予防の視点
  • 患者教育
  • 時期に合わせたエクササイズの選択
  • 膝関節、ACLの解剖学の知識

 

この辺りのポイントを意識して学習して行きましょう。