上腕骨人工骨頭置換術後のリハビリで肩関節の屈曲可動域制限を改善するための評価、治療方法のまとめ!


理学療法士の三好です。今回は、肩関節の可動域制限を改善するために必要な評価、治療方法についてまとめていきたいと思います。特に人工骨頭置換術後の患者さんへの治療のポイントも合わせて書いてみたので、可動域改善に悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。

 

まず、肩関節を学ぼう。

 

肩関節の概要

 

  • 肩関節(shoulder joint)、または肩甲上腕関節(scapulohumeral joint)
  • 肩甲骨の関節窩と上腕骨頭との間の多軸性で典型的な球関節。
  • 関節窩は浅くて狭く、関節頭の1/3から2/5を入れるに過ぎない。
  • 広範囲の動きが可能である反面、脱臼しやすい不安定な関節。
  • 第2肩関節の関節かと呼ばれる烏口肩峰靭帯、烏口突起、肩峰からなるアーチ状の構造で脱臼しにくくなっている。
  • 回旋筋腱板も安定化に作用。

 

 

肩関節の靭帯

 

  • 烏口肩峰靭帯
  • 烏口上腕靭帯
  • 関節上腕靭帯
  • 上腕横靭帯

 

・標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第2版より引用

 

肩関節周囲の筋肉

 

  • 三角筋
  • 棘上筋
  • 棘下筋
  • 小円筋
  • 肩甲下筋
  • 大円筋

 

これらの筋肉が肩甲骨からおこって上腕骨に停止する筋肉になります。

 

  • 回旋筋腱板(ロテータカフ):棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋

 

その他に肩関節の運動に関わる筋肉としてあげられるのは、

  • 僧帽筋
  • 広背筋
  • 大胸筋
  • 小胸筋
  • 烏口腕筋
  • 上腕二頭筋
  • 上腕三頭筋

 

になります。

 

肩関節屈曲制限の原因

 

大円筋、小円筋、棘下筋、広背筋の短縮、滑走不全

 

肩関節屈曲制限の原因として多いのは、大円筋、小円筋、広背筋といった肩関節の後下方に位置する筋肉の短縮や滑走不全です。

 

人工骨頭置換術後、固定期間がある患者さんの場合は肩関節周囲の組織が硬くなり制限が生じますが、これらの筋肉も同様に硬くなっています。

 

大円筋、小円筋、広背筋は、肩甲骨の外側から上腕骨の大結節、または小結節に付きますので肩関節を屈曲した時に伸張されます。

 

また、これらの筋肉が短縮し伸張性が低下しているために制限が生じている事と合わせて、筋間の癒着による滑走不全が生じていることもよくあります。

 

特にこの3つの筋は隣り合わせになっており、筋が密接しているので癒着しやすいです。癒着を改善することでROMが改善することはよくあります。

 

 

三角筋の短縮、滑走不全

 

屈曲制限の場合、後方の組織の影響が大きいのでは?と考えがちかもしれません。ですが、三角筋の前部繊維による制限がみられるケースが多いです。

 

特に人工骨頭置換術をされている患者さんで固定期間があった方は前方に創部があり、創部が修復される時に周囲の組織と瘢痕、癒着を起こしているのでとても硬くなっています。

 

この場合、三角筋前部繊維と、その周囲の組織の癒着により制限が起きている状態になっています。

 

また、三角筋の中部繊維、後部繊維も屈曲制限に関わりますので評価が必要です。

 

癒着する箇所として多いのは、大胸筋と三角筋の筋間、三角筋、上腕二頭筋、大胸筋の交叉する部分。この辺りが癒着して滑走性が悪くなっていることが多いです。チェックするのは、筋肉と筋肉の間を触診して、硬さを見てみてください。筋間は特に硬くなっていることが多いです。

 

そこをしっかりと剥がしてあげると可動域が改善することが多いです。

 

 

烏口上腕靭帯と腱板の癒着

 

烏口上腕靭帯は、烏口突起から上腕骨の大結節、小結節に付着します。

 

大結節に付着する横方向の繊維と、小結節に付着する外下方向繊維に分かれるので、繊維方向を意識したリリース、ストレッチが必要となります。

・標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第2版より引用

 

 

滑液包の閉塞

 

肩甲骨下滑液包は、肩甲骨と肩甲下筋の間に存在します。ほとんどの拘縮肩に肩甲骨下滑液包の閉塞がみられ、滑走性を低下させ可動域制限の原因となると言われています。

 

肩甲下滑液包 は肩甲下筋と肩甲骨との間に存在し、摩擦を減弱する注 油機構である。Weitbrecht 孔で関節腔内と交通しており、 関節運動にともなう内圧上昇の調整をしている。ほとん どの拘縮肩症例において、この肩甲下滑液包の閉塞が関 節造影で確認されており関節液の行き場がなくなってし まうことでの関節内圧の上昇が疼痛を引き起こすことなる。肩甲下筋と肩甲骨間滑動装置が機能不全に陥り 可動域制限や腱板機能不全となる。

・拘縮肩に対する理論的背景 福島ら より引用

 

 

肩関節屈曲制限の改善、治療、アプローチ

 

大円筋、小円筋、棘下筋、広背筋のリリース、滑走性改善

 

大円筋、小円筋、棘下筋、広背筋は肩甲骨の外側から起始して上腕骨の大結節、小結節に停止します。

 

癒着を改善する場合、これらの筋肉が隣り合っているポイントをしっかりと引き剥がすように動かしてあげることが大事になります。

 

筋繊維自体の硬さを改善する場合は、筋繊維を構成するコラーゲン繊維、エラスチン繊維をほぐすようにリリースしてあげます。

 

いずれにせよ、滑走性改善、柔軟性改善ができているかどうか、治療後に改善が見られたか評価しましょう。組織の柔軟性のチェック、可動域のチェックをして治療の効果を確かめることが大事です。

 

 

三角筋、大胸筋、上腕二頭筋のリリース、滑走性改善

 

前方の組織も同様に、筋間をしっかり引き剥がすように癒着を改善していきましょう。

 

結構硬くなっているので、痛みを訴えることが多いです。ただ、痛みが出ている部位ほど癒着が起きていて制限因子となっている可能性が高い部位ですのでしっかりと剥がしていきましょう。

 

関節包のリリース

 

関節包の構成

 

  • 外層 繊維膜 神経繊維を豊富に含んでいる。
  • 内層 滑膜 血管に富む。

 

リリース

 

関節包の繊維膜は名の通り繊維でできており、繊維が硬くなると関節の可動域制限の原因となります。肩関節の関節包も上腕骨頭を覆うようにできていますので、繊維膜をほぐすようにリリースしていきましょう。

 

表層には、三角筋があり、関節包はその下にあるので三角筋をリリースして十分にほぐれた後に行っていきます。

 

烏口上腕靭帯のリリース、ストレッチ

 

烏口上腕靭帯も三角筋の前部繊維や皮膚といった表層の組織の柔軟性がないとリリースが難しいです。そのため、まず表層の組織をほぐした後にリリースしていきます。

 

三角筋の中部繊維、前部繊維が個別に動かすことができるくらいほぐれてしまえば、深層の触診もできるようになります。

 

より深くを触診し、靭帯をリリースしていきましょう。その後、靭帯を伸ばしてあげるように骨頭の動きを意識しながらストレッチをかけていきます。

 

 

肩甲骨の固定、上腕骨のみの運動を意識した可動域訓練

 

基本的なところですが、やっぱり肩甲骨が固定された状態で上腕骨の動きが出せなければ結果が出ません。

 

他動で動かす際に、肩甲骨と上腕骨頭をしっかりと触診して代償が出ていないかどうか確認しながら動かしていきましょう。

 

オススメの触診方法

 

背臥位で右の肩甲骨を触診するときは、左手の母指は烏口突起、小指、薬指は肩甲骨の後面、外側を触れて肩甲骨の動きを把握する。右手は肘を持ちます。患者さんの肘関節は屈曲位にしておきます。屈曲、外転運動をさせていくときに肩甲骨の代償が出ないか、棘下筋や大円筋、小円筋、三角筋の伸張感はどうかといったことを確認するようにします。

 

 

滑走性を改善するための自動運動

 

リリース、ストレッチ、他動運動である程度可動域を改善できたら自動運動も行っていきましょう。自動運動をする際に滑走性をより改善したい場合良い方法がありますので紹介します。

 

自動運動をしてもらうときに、癒着している筋間に手を入れた状態で筋収縮を入れるといった方法です。

 

筋が収縮する際に単独で収縮できて入れば問題なく運動が行えますが、癒着を起こしている場合、うまく運動が行えません。

 

手を入れた状態で何度か運動をしてもらうと、癒着が剥がれて運動が行いやすくなってきます。だいたいの場合、10回程度運動を反復してもらうと変化が見られるので試して見てください。

 

 

肩関節屈曲制限に対する評価、治療 まとめ

 

  • 後下方の組織だけでなく、前方の組織が関与
  • 外側の組織をリリースしたら、深層の組織にもアプローチ
  • 肩甲骨、上腕骨を正確に触診して、代償を見抜く
  • 肩甲骨が固定された状態で、骨頭が動けるように意識して動かしていく