こんにちは、三好(@yuyampt)です。
今回は、膝関節の可動域制限の評価、治療について臨床での問題解決に苦戦している人に向けて記事を書きました。
臨床やっててこんな事はありませんか?
[box class="blue_box" title="臨床での悩み"]
- 膝屈曲、伸展可動域が改善できなくて悩んでいる
- 可動域制限を改善したいけど、原因がどこかわからない
- 原因はだいたいわかっているけど、どうやって評価したらいいんだ?
- 評価まではできたけど、治療の方法がわからない
[/box]
今回はこんな悩みを解決します!
僕も新人の頃は可動域の改善にかなり苦労していました。だから、新人PTの気持ちはとてもわかります!
僕なりに今まで経験してきた中でよかった方法を紹介していきますので参考にしてみてください^^
膝関節屈曲可動域制限の原因と評価方法
膝関節屈曲制限の原因といったらどこでしょう?
すぐに思い浮かびますか?
大事なのは、膝関節屈曲制限の原因となる組織は?と聞かれたら細かくパッパッパと言えるようにしておく事です。
そう言われても、なかなか出てこない場合もあると思います。
今回を機に膝関節のROM制限の原因となる部位は全部把握しちゃいましょう!
さて、一つずつ原因となる組織と評価方法を確認していきます。
膝関節屈曲制限と大腿四頭筋
まずは膝屈曲制限に大きく関わる大腿四頭筋の問題について紹介します。
大腿直筋の短縮
大腿直筋は定番ですね。
大腿直筋はASISからパテラまでつく2関節筋なので、大腿直筋が短縮していると膝の屈曲が制限されます。大腿直筋の短縮テストや触診で確認していきましょ。
大腿直筋短縮テスト(エリーテスト)で原因となっているか確実に把握しよう
理学療法評価学 第2版より引用
- 伏臥位にて検査側の膝を屈曲
- 膝屈曲の程度は背臥位の時と比べてどうか?
- 90度以上屈曲できないようであれば大腿直筋は短縮し硬い状態と考えて良い
- 可動域制限の原因となっている可能性が高い
おなじみのエリーテストさんで確認しましょう。
だいたい90度も屈曲できないようだと大腿直筋が屈曲制限に関与している可能性が高いですね。
エリーテストと合わせて、膝屈曲最終域で大腿直筋を触診して大腿直筋がもりあがってくるか(緊張が高まるか)確認しときましょ。
もりあがってくる感じがあれば、大腿直筋の短縮が原因となっている可能性が高いですよ。
どの組織もそうなんですけど、ROM制限に関与するかどうかの判断は最終域でその組織が張ってくる感じ(もりあがってくる感じ、緊張が高まる感じとも言える)があるかどうかで判断できます。
結局、可動域制限を改善するには触診が命って事になります。可動域制限の改善においては触診ができれば怖いもの無しです。
大腿四頭筋の癒着、滑走不全
可動域制限について考えるときに筋肉の癒着について考えた事はありましたか?
僕は新人の頃は癒着や滑走不全についてはあまり考えていませんでした。
でも、一度気づいてしまうとびっくりです。
この癒着や滑走不全が原因となって可動域制限が起きているケースがめちゃ多いんです。
大腿四頭筋についてですが、
大腿四頭筋は内側広筋、外側広筋、中間広筋、大腿直筋と分かれますが、この4つが癒着していると滑走不全が起き、可動域制限の原因となります。
膝OAの人にかなりの頻度であるのが、外側広筋と大腿直筋、中間広筋、膝蓋上嚢の癒着です。
このあたりが癒着し、筋肉の滑走不全が起きている事で筋収縮もうまくできず筋力発揮が難しくなっていたり、可動域制限が起きている事がかなり多いです。
上の写真は外側広筋と大腿直筋の筋間を触診しています。
この方は膝OAで外側広筋の停止部がかなり硬くなっています。外側広筋と大腿直筋の癒着も生じていたので、リリースして改善していきました。
具体的な方法は下記で治療方法のところで紹介します。
大腿四頭筋の過緊張、過剰収縮
短縮や滑走不全だけでなく、過緊張により可動域制限が生じているケースも多いです。特に術後の防御性収縮なんかはよくみられます。
この場合は他動で膝を屈曲しようとしてもなかなか力が入ってしまって屈曲できません。
他動で無理やり動かそうとするのではなく、自動で運動してもらう。
それか等尺性収縮を使って、まずは力の入れ方を知ってもらう事。それから力の抜き方を教えてあげる事が大事です。
よく『力を抜いてください!』って力を抜く方をやろうとしてしまう人がいますが、力の抜き方がわからない人は力の入れ方がまずよくわかっていない人が多いです。
まずは力の入れ方を教えてあげましょう。それから力の抜き方です。
膝屈曲制限の原因となる大腿四頭筋以外の問題
ここから大腿四頭筋以外に屈曲制限に関わる筋肉について紹介していきます!
大腿筋膜張筋の短縮
大腿筋膜張筋はASISから脛骨までつきます。この筋肉は外側に位置していますが、骨盤から脛骨につきますので短縮することによって膝の屈曲制限に関わってきます。大腿筋膜張筋の短縮テストで確認しておきましょ。
大腿筋膜張筋短縮テスト
[aside type="boader"]
- 側臥位で股関節、膝関節中間位
- 上の下肢が床につくかどうか確認
- 床につかずに浮いてしまうようであればかなり短縮しています
- 他動で動かしてみて伸張感の左右差をみてみましょう
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左右差をしっかり確認する事がポイントです。
左右差を比較しないとその人の患側にどの程度の問題が起きているのかを評価できません。
患側だけ見て、「この程度のなら問題ないか」で終わらせてしまうのは良くないです。
正常範囲でも、微妙な左右差が問題点としてあげることは少なくないので、しっかりと左右差を評価するクセをつける事が大事です。
縫工筋の短縮
縫工筋も膝関節の屈曲制限に関わります。
チェックしている人は少ないかもしれませんが、結構な頻度で関与してくるので評価しておきましょう。
縫工筋を触診したまま膝関節を屈曲していって、最終域で縫工筋の緊張が高まるかどうか、「張っている感じ」が感じられるかどうか、患者さんの訴えはどうか確認してみてください。
膝関節屈曲制限の原因となる筋肉以外の問題
筋肉以外の要素もかなりの頻度で膝関節屈曲制限に関わるので要チェックです!
膝蓋下脂肪体の硬化
標準理学療法学作業療法学 解剖学 第2版より引用
膝蓋下脂肪体は定番ですね。
ここは膝関節を見るときは必ずチェックしてほしい部位です。
評価方法は、膝関節軽度伸展位でパテラ下部を触診してみてください。
硬さはどうか?左右差をチェックしましょう。あまり評価した経験がない場合は、自分のパテラ下部の硬さとの違いをみてみましょう。
他の人の硬さも触らせてもらって、硬さの違いを感じ取れるようにしてみてください。
それから患者さんの膝下、膝蓋下脂肪体の硬さを触ってみると「めちゃ硬いじゃん!」て違いがわかると思います。
膝蓋上脂肪体の硬化
【膝蓋上脂肪体】
膝蓋下脂肪体、膝蓋上嚢だけでなく、膝蓋上脂肪体も膝関節屈曲制限に関与する。
特に深屈曲や正座をする際に大腿四頭筋の滑走を促すだけでなく、他の軟部組織と連動して変形できる柔軟性が必要というデータがある。
膝蓋上脂肪体のチェックも忘れず。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月4日
膝蓋下脂肪体だけでなく、膝蓋上脂肪体があることも忘れず。
膝蓋靱帯の硬化
パテラの下方、膝蓋下脂肪体の表層側に位置する膝蓋靭帯が硬くなっていることによってパテラや脛骨の動きが制限されるため、膝関節の可動域制限に繋がります。
膝蓋上包、膝蓋上嚢の硬化
膝蓋上包が硬くなっていることによってパテラの動きが制限されます。膝関節を屈曲する際にパテラが滑りにくくなることで膝関節の屈曲制限に繋がります。
膝蓋上嚢は大腿四頭筋のさらに深層に位置するので、大腿四頭筋の奥をつかむようにして触診します。
膝蓋上嚢が硬い人はここが石のような塊になっているのでわかりやすいですよ。
こんな感じで硬くなっている部位を掴んでみてください↑
創部周囲の腫脹
OPE後で創部周囲の腫脹がある時期は可動域制限があっても仕方がない時期です。疼痛の範囲内で無理せず訓練を行っていきましょう。
早く可動域を改善しなければ!と焦って可動域訓練を行ってしまう方もいると思いますが、痛みがある時期に無理して可動域訓練を行っても逆効果です。痛みを悪化させて後々防御性収縮の原因となったり可動域制限の原因を作ってしまうことに繋がりますので、急性期は疼痛のない範囲で訓練を行いましょう。
関節内圧の上昇
OPE後や受傷後は炎症が起き、関節内圧が高まっている状態ですので無理に可動域訓練を行おうとしても痛みが出てしまいます。
腫脹が落ち着くまで、無理せず、焦らず患者さんの痛みのない範囲で訓練を行うことが大事です。
膝関節屈曲制限に対する治療アプローチ(硬くなった組織のリリース)
筋膜リリース
【筋膜リリース】
皮膚のたるみがなくなる程度のソフトタッチでリリースを開始。
90-120秒間(長くて5分)圧を維持すると膠原要素がリリースされて組織が柔らかくなる。
弾性繊維のエラスチンが組織に本来の形態と柔軟性を取り戻させる。
組織が柔軟になるのを感じるまでリリースしよう。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月3日
縫工筋のリリース
縫工筋の触診してますか?
結構縫工筋の触診やリリースを見逃している場合がありますよね。結構縫工筋が原因で膝が曲げにくくなっている人は多いので、制限の原因となっている場合はリリースしてあげましょう。
大腿四頭筋の滑走不全を解消する方法
外側広筋と大腿直筋の筋間の癒着とって膝関節屈曲制限の改善に繋げる方法の紹介です。
痛みがありますが、癒着している部位を圧迫しながら他動的に膝屈伸をさせる事で筋肉を滑走させて癒着を剥がしていきます。徒手でリリースするより剥がれやすいですよ。
ポイントは、筋間が癒着している硬い部位をしっかりと圧迫しておくことです。
しっかりと押さえられていれば他動的に動かして筋肉が滑走した時に癒着が剥がれていきます。
膝蓋下脂肪体のリリース
膝蓋下脂肪体は膝蓋靱帯の深層部に位置します。膝蓋靱帯とその下の組織をしっかりと持ってあげて繊維に対して垂直に動かしてあげましょう!痛みのない範囲でよーく動かしてあげて、左右差のないところまで柔軟にしてあげることがポイントです。
膝蓋骨のモビライゼーション
周囲の組織のリリースをしてパテラの動きを出せるようになったら、パテラを直接動かしていきましょう。前後左右に丁寧に動かして、左右差のないところまで自由に動けるようにして行きます。
脛骨の回旋可動域の改善
これをやってあげることで、膝蓋下脂肪体や膝蓋靭帯の柔軟性改善にもつながります。
脛骨の前後、内外側につく組織の硬さによって脛骨の回旋可動域が制限されています。回旋可動域が制限されていると屈曲伸展制限に影響を与えます。それだけ関節周囲の組織が固くなっているということです。
周囲の組織のリリースをしたら脛骨の動きもしっかり出していきましょう。他動的に回旋運動をするのと、自動運動でも行ってもらいましょう。自主トレーニングで指導すると良いです。
膝関節屈曲制限を改善するスタティックストレッチ
【拘縮の治療】
原則はheat and stretch。100-200gの軽い負荷で行う。
可動域の最終限界にて関節に伸張力を加えることと、温熱による関節包、周辺靭帯等の軟部組織の剛性変化を合わせて行うもの。
過剰な伸張はコラゲンの変性、組織の断裂によって組織を引き伸ばし有痛性の組織反応を引き起こす。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月3日
【結合組織の伸張】
結合組織の伸張には20-30分間の持続伸張が望ましいとの報告が多い。
これは長時間にわたり弱い伸張力を加える方が伸展力を除いた後にも効果ぎ持続するという結合組織の性質があるため。
臨床では長い時間はかけられないけど伸張時間を変えてみて治療効果を評価してみよう。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月3日
縫工筋のストレッチ
大腿直筋のストレッチ
膝関節屈曲制限を予防する筋力トレーニング
膝関節に対する治療を行なった後に、体幹や股関節周囲といった近位筋の筋力強化を行い、膝関節の負担を軽減してあげることで再発予防を行って行くと良いですよ。
片脚ブリッジ
背臥位での股関節周囲筋強化エクササイズ
側臥位での股関節周囲筋強化エクササイズ
関節可動域制限改善を学ぶのにおすすめの書籍
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