こんにちは、理学療法士の三好です!足関節の可動域制限の改善に悩んでいる方は多いんじゃないでしょうか?そこで今回は足関節の底屈制限の原因から治療方法までまとめてみました。悩んでいた方はぜひ臨床に役立てていただければと思います。
足関節の底屈可動域制限の原因
足関節の前方の組織だけでなく、後方の組織、内側外側の組織も原因となります。
皮膚性の制限
皮膚の伸張性が低下して足関節の可動域制限になっていることも少なくないです。
【膝関節の可動域制限の割合】
関節構成体が約45%
筋が40%
皮膚が15%
皮膚の割合は少なくない。
エンドフィールでの皮膚の張りを評価し、張っているようであれば皮膚、皮下の滑走性を改善させてみよう。— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年6月11日
これは膝のデータですが。経験上でも皮膚性の制限は多いと思います。
【皮膚の緊張】
皮膚はその下にある筋肉の緊張状態を反映している。
姿勢を変えて、皮膚を触診、動かしてみて緊張状態をみてみる。
緊張が高くなっていれば皮膚は硬く動きにくくなる。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2017年12月24日
筋性の制限
前脛骨筋
やっぱり前脛骨筋は結構な割合で制限因子となっています。前脛骨筋の硬さ、短縮の程度は要チェックです。
長趾伸筋
前脛骨筋の隣に位置している筋肉です。この筋肉も脛骨の上端から足関節の前面を通って足趾までつきますので底屈制限に関わってきます。特に、足関節の前面部分で硬結となっていることが多いのでチェックしておきましょう。
長母指伸筋
この筋肉も短縮、硬化していると足関節の底屈制限に関与します。
軟部組織性の制限
脂肪体 kager's fat pad
【kager's fat padの構造】
アキレス腱領域、長拇趾屈筋領域、踵骨滑液包ウェッジ領域に分かれる。
長拇趾屈筋領域が底屈に伴いL字型に変形する事で踵骨滑液包ウェッジがアキレス腱と踵骨の間に進入し、スムーズな踵骨の底屈に貢献する。
アキレス腱周囲の脂肪体を柔軟に動けるようにする事が大事。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年6月19日
画像だと写っていませんが、踵骨の上の部分に脂肪の塊があります。これが硬くなると、踵骨がうまく動けなくなって足関節の可動性が悪くなってしまいます。ここの硬さも要チェックです!
パラテノン
【パラテノン】
パラテノンは血行と神経が豊富に存在する結合組織性の被膜。
アキレス腱には腱鞘が存在しないがパラテノンに走行する血管から栄養を受ける。
パラテノンが2-3㎝伸張する事でアキレス腱はスムーズに滑走できる。
パラテノンの伸張性はアキレス腱の滑走性や栄養に影響する。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年6月17日
靱帯性の制限
踵腓靭帯
標準解剖学 第2版より引用
踵腓靭帯だけでなく、足関節周囲の前方後方、内側外側にある靭帯はチェックしておきましょう。新人の頃って靱帯は見逃しがちなんですけど、かなり大事です。足関節とか膝関節は靱帯がたくさんあって可動域に影響を与えているので、靱帯の位置を把握して可動域制限に関与しているかをチェックできるかどうかが大切。
三角靱帯
【三角靭帯】
三角靭帯と前傾骨筋のクロスするポイントで癒着を起こしているケース。
外反制限だけでなく、底屈制限にも大きく関わっているので、しっかりリリースしてあげてからストレッチをかける事で底屈制限が改善される。
三角靭帯、前傾骨筋の硬さをチェックしてみよう。
— 三好 裕也【臨床で使える情報】 (@yuyampt) 2018年6月30日
靱帯自体の硬さとは別に、前脛骨筋との癒着によって可動域制限が生じているケースも少なくありません。
筋間の癒着、滑走性低下
実は筋肉が短縮しているだけでなく癒着していることによって滑走性が低下して可動域域制限になっていることが多いです。
癒着が起きていて、滑走不全が起きていると筋肉の短縮を改善しただけでは可動域制限は改善できません。
癒着はどうやってできる?
[aside type="normal"]足関節周囲の組織を損傷した後やOPE後炎症がおきます。組織を修復する際に損傷した部位の周辺の組織が癒着することが多いです。これは、組織を修復する際に修復するための物質が修復しなくて良い部位もあやまって修復してしまうことによっておきます。[/aside]
炎症後は、組織間の癒着が起きやすいのでこの癒着をしっかりとはがしてあげるということが治療のひとつのポイントになってきます。
足関節底屈可動域制限を改善するアプローチ方法
温熱療法
温熱療法は結合組織の循環不全、柔軟性を改善するのにとても効果的です!病院に勤務しているのなら使わないと勿体無い!
【ホットパック】
20分程度のホットパック後に関節可動域が改善するという報告がやはり多い。
温熱療法が使える環境であれば積極的に使って組織の柔軟性を改善した上でストレッチをするのが良い。
温熱療法のエビデンスは高い。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月4日
【ホットパックの効果】
脂肪や皮膚の柔軟性改善には効果的だが筋の柔軟性改善には要検討
皮下2cmの深部温度の上昇は1.5度程度にすぎない
加えられた熱エネルギーは皮膚の血液循環によって身体各部に拡散されるので深部へ熱を伝えるのは困難
脂肪組織の圧さ等を考慮して他の温熱療法と使い分けよう
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月6日
筋膜リリース
原因となる筋がある程度評価できたら、リリースをしていきましょう。
短縮している筋肉は、筋膜が硬くなっていることが多いです。筋膜をリリースして筋肉の柔軟性を改善してからストレッチや収縮運動をすることで治療の効果が高まります。
【筋膜リリース】
皮膚のたるみがなくなる程度のソフトタッチでリリースを開始。
90-120秒間(長くて5分)圧を維持すると膠原要素がリリースされて組織が柔らかくなる。
弾性繊維のエラスチンが組織に本来の形態と柔軟性を取り戻させる。
組織が柔軟になるのを感じるまでリリースしよう。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月3日
皮膚のリリース
【皮膚性足関節底屈制限の改善】
○足背、下腿前面の皮膚は関節に近づく方向に誘導。
○足底、下腿後面の皮膚は関節から遠ざかる方向に誘導。
皮膚は骨同士が近づく時、関節から離れる方向に動き、骨同士が遠ざかる時、関節に近づく方向に動く。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年7月8日
圧迫マッサージ、ストリッピング
筋繊維に対して垂直に圧迫していきます。筋肉が緩むところまで圧迫していきましょう。
ストリッピングは、筋繊維に対して平行になぞるようにして行います。皮膚に摩擦が加わりますので痛みが出ない範囲で行なっていきます。
指の腹で行なったり、手関節の骨を使ったり、肘を使っても良いです。部位に応じて選択していきます。大きい筋肉には肘、小さい筋肉には手指がおすすめです。
足関節の場合は細かい筋肉が多いので、手指を使うことが多くなると思います。
踵骨の上にある脂肪体は固くなっていることが多いので、脂肪体をしっかりとマッサージしてほぐしていきましょう。
しっかりとほぐしてあげると、踵骨の動きが自由になってきます。踵骨の動きが自由になるまで丁寧にマッサージを行いましょう。
癒着を剥がす 滑走性の改善
筋間の癒着があると、筋肉の短縮に対するアプローチをするだけでは可動域制限が改善されないことが多いです。筋間の癒着を改善することで筋肉が単独で滑走できるようになり可動域の改善に繋がります。
癒着、滑走不全の治療方法
- ターゲットとなる筋肉を触診
- 筋肉を直接掴む
- 筋繊維に対して垂直に動かす
- しっかりと動くようになるまで継続
- 痛みの訴えを聞きながら行う
- 左右差もチェックすること
結構多いのが、足関節の前面で前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋、第3腓骨筋が走行していますが触診すると筋間が硬くなっているケース。筋間の滑走不全が起きていて底屈制限が生じています。これらの筋を一つずつ分けてあげるように触診して癒着を剥がしていきましょう。
前脛骨筋と靱帯の癒着、滑走不全
脂肪体(kager's fat pad)の滑動性改善
【kager's fat padの滑動性改善】
踵骨を底屈させる時にkager's fat padを踵骨側に誘導する。
簡単に言うとアキレス腱の奥を持って、底屈とともに踵側に押し込んであげる。
そうすると、底屈時の詰まり感を軽減し可動性の改善に繋がる。
リリースと合わせてやってみよう。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年6月19日
スタティックストレッチ
リリース、滑走性の改善ができたらストレッチをして筋の短縮を改善していきます。
【軟部組織ストレッチ方法】
筋を最もリラックスさせ等尺性収縮後に最大伸張する
筋は短縮位で等尺性収縮する
10-12秒以上伸張を行う
数回の伸張後に拮抗筋の最大随意収縮を行う
これらがストレッチの効果が出やすいポイント。試してみよう。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2018年6月28日
ストレッチのコツ
- 時間は10秒×3セット
- 徐々に強くストレッチ
- 筋の走行を知り、個別にストレッチをかけていくことが大事
効果のあるストレッチの方法について詳しく知りたい方はこちらをチェックしてみてください。
正しいストレッチの方法知ってる?本当に効果のあるストレッチ方法を理学療法士が解説します!
足関節の底屈可動域制限 評価・治療 まとめ
- 足関節の前後左右の組織がどう存在しているか確認
- 皮膚、筋、靭帯、脂肪体、硬さ、滑走不全のチェックを忘れず
- アライメントを見て、どこの組織が硬くなっているか予測を立てる
- 踵骨、距骨の動きをしっかりと出してあげること
- リリース、マッサージで組織をほぐす
- ストレッチは10秒から20秒しっかりと時間をかけて合計30秒以上行う
- 筋短縮だけでなく癒着に対してもアプローチする
臨床で試してみてください^^
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関節可動域改善note
僕が考える関節可動域制限を改善するための評価、治療方法を全て詰め込みました!ぜひ臨床に役立ててください^^