理学療法

股関節屈曲可動域制限の原因と評価、治療アプローチ!動作との関連も簡単に解説!

三好 裕也

日本の理学療法士・ピラティスインストラクター。藤沢市の整体ピラティスサロン「Miyoshi整体サロン」を運営。YouTube登録者8万人突破! →さらに詳しいプロフィールはこちらをクリック

こんにちは、三好(@miyoyu34)です。

僕は総合病院で働いていますが、関節可動域の改善に関しては結構学習しまして、ある程度経験を積んだので臨床で改善する事ができるようになってきました。

股関節の可動域制限の制限因子って結構わかりにくかったりしますよね。その制限因子の特定方法で悩んでいる人も多いはずです。僕は実際悩んでいました。

先日に下記のTweetをしました。

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【股関節屈曲制限】

腸腰筋の硬さ、大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋の硬さ、滑走不全により制限となっている事が多い。

これが原因で最終域で股関節前面につまり感を感じる方がいる。

組織のリリース、他動的に動かしてあげた後、軽く筋収縮を入れて滑走不全を改善してあげると改善される事が多い。

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股関節の制限因子ってどこが制限になっているのかが膝と比べると股関節は難しい印象があります。そこで、股関節の屈曲制限に関わる因子、評価、治療の方法についてまとめてみましたので股関節の制限が改善できなくて悩んでいる方はぜひ、チェックしてみてください。

股関節の評価、治療で悩んでいる人におすすめの本はこちらです↓

股関節屈曲制限の原因、制限因子をざっと確認

[box class="blue_box" title="股関節筋性の制限因子"]

  • 大殿筋
  • 中殿筋
  • 大腿直筋
  • 内転筋
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス
  • 腸腰筋
  • 梨状筋
  • 縫工筋
  • 大腿筋膜張筋

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このあたりが主に制限因子となる筋になります。筋以外に筋膜、皮膚、関節の問題が関与します。

新人の頃は股関節伸展制限といえば、股関節伸展筋でしょ!と選択肢が少なかったりしますが、股関節後面の筋だけでなく股関節周囲の組織を幅広くチェックする必要があります。

1つ1つこれらの筋を触診できるようにすることが大事です。触診できるか、できないかで可動域制限を改善できるかできないかが決まるといっても言い過ぎではないと思います。

股関節屈曲制限の原因、制限因子の簡単な捉え方

関節可動域の問題を見る時は、僕の場合関節を動かしていった時に、表層から皮膚→筋膜→筋→関節のどのレベルで突っ張り感が出ているのかを感じとるようにしています。はじめは本当にゆっくりのペースで動かすようにして、どの組織が伸張されているのかを感じ取るように何度も練習します。

皮膚レベルで硬ければ皮膚のリリース、筋膜なら筋膜リリース、筋であればトリガーポイントなどの施術を行います。

また、僕なりに股関節の屈曲制限を見るときにまずは、股関節の前方組織に問題があるのか、股関節後方組織に問題があるのかに分けて考えるとわかりやすいのかなと考えています。

まずは大まかに捉えて、股関節の前方の組織、後方の組織のどちらに問題があるのかを考えていくとわかりやすいと思いますので、今回はこの2つに分けて解説していきます。

股関節前方組織の問題

前方の組織のチェックポイントは大きく分けて下記の3つです。

[box class="green_box" title="股関節前方の組織"]

  • 腸腰筋
  • 大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋
  • 内転筋

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順に見ていきましょう!

腸腰筋の問題

腸腰筋が原因の場合は、股関節を屈曲して行った時に最終域で股関節の前方に詰まってくる感覚を訴える方が多いです。股関節の屈曲制限なのに伸展筋じゃなくて屈曲筋がなんで制限になるの?と考える人もいるんじゃないでしょうか。

股関節の前方にある筋肉の滑走性が低下していることによって骨盤と大腿骨の間に筋肉が挟み込まれる形になって詰まったような感覚が生じるということが考えられます。

この場合、腸腰筋の硬さを除いてあげる事で股関節の可動域が広がる事が多いです。

大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋の問題

大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋に硬さがあっても股関節屈曲制限に関与します。腸腰筋と同様でこれらの筋が硬くても股関節屈曲最終域で前方につまり感を感じる事が多いです。

これらの筋を1つ1つ触診できるようにして、リリースできるようにしておくと改善させる事ができますよ!

触診が苦手な場合はこの本を読んで実践すると間違いないです↓

股関節内転筋の問題

内転筋が原因となる場合は、股関節屈曲最終域で内転筋が突っ張る感覚の訴えや触診すると内転筋が張っている感覚があります。

股関節外転制限がどの程度か。股関節外転制限が著明にあって内転筋の短縮が強い場合、股関節屈曲制限に内転筋が関与している可能性は高いです。

股関節後方組織の問題

後方にある組織は大きい筋肉が多いので制限因子となりやすいです。大きく関わってくるのは、ハムストリングスや大殿筋です。この2つは筋肉自体が大きいので可動域制限に与える影響も大きくなります。

それでは、見ていきましょう!

ハムストリングスの問題

 

[aside type="normal"]

股関節を屈曲最終域でハムストリングスのハリ感を確認します。また、最終域で膝関節屈曲の程度を強めてハムストリングスをより緩めた状態にすることで股関節屈曲可動域が広がるようであればハムストリングスが関与している可能性が高いです。

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立ち上がり動作のことを考えると、膝関節屈曲80°程度で股関節屈曲がしっかり行えるようにハムストリングスの制限は改善しておきたいですね。

股関節外旋筋の問題

外旋筋に問題があっても股関節の屈曲制限が生じます。

特に大殿筋は股関節の屈曲制限に関わっていることが多いです。大殿筋が短縮している場合、股関節屈曲していったときに大殿筋を触診しながら最終域まで屈曲していくと緊張が高まってくるのが感じられると思います。

肥満傾向の方など、触診で判断するのが難しい場合

触診が難しい場合もあります。その場合は、大殿筋に対して個別にストレッチをかけていくことで大殿筋の短縮の程度をみていきます。

屈曲だけでなく大殿筋のストレッチをかけてみる

[box class="yellow_box" title="大殿筋のストレッチ"]

背臥位で股関節屈曲90度、膝90度の状態から骨盤を固定した状態で股関節を内転位に入れる。恥骨結合を横切れない程度の硬さがあれば大殿筋の短縮の可能性あり。

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運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹より引用

股関節屈曲運動だけでなく大殿筋をより伸張する運動を通して股関節の屈曲制限に関与しているか予想を立てるといった方法です。

股関節が外旋している方は、運動連鎖から考えていくと骨盤が後傾し、膝関節が内反、足部が回外します。外旋位での歩行を続けると少なからず膝へのストレスはかかりますし、筋力も発揮しにくい状態となっています。

創部周囲の癒着の問題もみておく

THAや人工骨頭置換術後では、創部が股関節周囲になるため、創部周囲に癒着が起きてくると股関節の前方の組織が硬くなってしまい、滑走不全が生じていることが多いです。

股関節前方に詰まっている感覚があって、股関節前方の組織に硬さを認める方の場合、股関節の前方の組織の硬さや滑走性低下の改善をすることが必要になります。

筋以外の組織の確認も忘れず

術後や不動期間が長かった場合など、病院の入院患者さんの場合は筋だけでなく皮膚や筋膜の問題があるケースがほとんどです。筋だけにアプローチして皮膚、筋膜にアプローチできていなければ制限だけでなく、動作時の痛みも改善できません。

皮膚、筋膜に対する触診技術と、ここに関してはリリースの方法を学ぶと良いです。

皮膚を学ぶならこちらの本がおすすめです。

股関節屈曲制限が立ち上がり動作に与える影響

 

股関節屈曲90度以上確保しないと立ち上がりが困難になります。

股関節屈曲制限は立ち上がり動作に大きく影響します。実際に今担当している患者さんで股関節屈曲が90°以上行うことができない方がいますがその方は上肢で代償をしないと立ち上がることができません。

股関節屈曲角度は最低でも90°以上はないと立ち上がり動作を行いにくくする原因となります。立ち上がり動作では、膝関節屈曲角度も影響してきます。

膝関節屈曲80度程度の状態で股関節が90度以上屈曲する事が必要になります。このためにはハムストリングスの柔軟性が保たれていないといけません。

股関節の屈曲制限の改善が難しいのであれば、体幹の柔軟性を改善して体幹屈曲で代償する事で前方への体重移動を促していく事もできます。膝関節や足関節の可動域を広げて、重心が足部に入りやすい状況を作ってあげても良いかもしれません。

股関節屈曲制限が歩行に与える影響

筋や組織の柔軟性低下が影響します。

股関節屈曲制限が著明な場合は、歩幅の減少に繋がることがありますが屈曲角度の制限がそのまま歩行に影響を与えているというよりは、屈曲制限の原因となっている筋や組織の柔軟性が低下していることによって歩行時の筋力発揮のしにくさに影響を与えていることが多いと思います。

腸腰筋が癒着、滑走性低下している場合股関節屈曲の最終域で制限となります。また、股関節伸展制限の原因にもなります。

腸腰筋が癒着、滑走性低下している場合、腸腰筋の筋力が発揮しにくい状態になっています。腸腰筋が主に力を発揮し歩行時で一番影響を与えるのは、遊脚時です。

本来であれば腸腰筋は立脚の後期で伸張され、その後遊脚に切り替わる際に伸びきった腸腰筋がバネ作用により縮むことによって股関節が屈曲していきます。この腸腰筋の作用がうまく機能していない場合、代償動作が生じます。

よくある代償動作は、体幹の後屈、側屈、ぶんまわしあたりです。他にも膝を過度に屈曲させていたり、足関節背屈を利用していたり。

こういったパターンがあった場合、腸腰筋のリリースをした後、腸腰筋のストレッチ、収縮訓練を行った後に再度歩行をしてもらうと代償が軽減している事が多いです。治療の結果、その代償動作の原因の一つとして腸腰筋の滑走性低下、機能不全が関与していたということになります。

股関節屈曲制限を改善する治療アプローチ

[voice icon="https://pt-beyourself.com/wp-content/uploads/2018/07/IMG_5819.jpg" name="MIYOSHI" type="l"]

  1. リリース
  2. ストレッチ
  3. 筋収縮エクササイズ

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一番ベストなのは、動作に問題がありそれを改善する必要がある場合は短縮している筋をリリースやストレッチを通して緩めた後、相反抑制がかかっていて筋力発揮できていなかった筋の収縮を促すエクササイズを行ってあげる。

逆に短縮していた筋に相反抑制をかけていってあげて緊張を落としていくことでニュートラルポジションに近づけていくことです。

リリース

 

筋膜リリースの学習はこちらの本がおすすめ↓

スタティックストレッチ

僕のおすすめは、10秒を3セット分けて、合計30秒とする方法。 個人差はありますが、これくらい時間をかけると可動域が変わる事が多いです。

個別ストレッチの方法をまだ知らない人はこちらの本で学ぶと臨床ですぐ使えますよ↓

エクササイズ

エクササイズは、原因筋と拮抗筋どちらも収縮させるエクササイズを行っていきましょう。

[box class="blue_box" title="筋収縮を利用して改善する"]

可動域制限の原因となる筋の滑走性を改善させてあげるように、硬くなっている筋自体の筋収縮を促すエクササイズ、それと拮抗筋にも収縮を入れて相反抑制の働きで原因筋のリラックス効果目的でエクササイズを行っていきます。

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ぜひ臨床で試してみてください!

まとめ

今回は、ざっと股関節屈曲制限の原因、評価、治療についてまとめてみました。

股関節の可動域制限は膝関節と比べて評価しにくい印象ですが、可動域制限の原因となっている組織を覚えて、毎回触診をしながら評価をしていくうちに制限因子の特定ができるようになってきます。

何より継続して毎日評価をするクセをつけるのが大事かなと思います。個人的には触診ができるかできないかで可動域制限は改善できるか、できないか決まると思っています。

関節可動域制限の改善について深く学びたい人はこちらの記事で関節可動域制限の改善するための知識をつけるのにおすすめの書籍を紹介していますのでチェックしてみてください↓

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