大腿直筋って短縮したり、過緊張で痛みがでたり、硬さがあって股関節の制限になったり、膝関節の制限になったり問題があると、色々影響を当たる筋肉ですよね。僕も臨床で大腿直筋って厄介だなーってよく思ってました。
今回は、その厄介な大腿直筋の緊張を落とす方法、短縮や硬さを改善する方法を伝えていきます。あなたも臨床で大腿直筋の硬さや緊張を改善して患者さんの悩みを解決できます!ぜひ試してみてください。
大腿直筋の概要
- 起始:下前腸骨棘(Anterior inferior iliac spine、AIIS)、寛骨臼上縁
- 停止:膝蓋骨、膝蓋靱帯を通して脛骨粗面
- 神経支配:大腿神経(L2〜4)
- 作用:膝関節伸展、股関節伸展
大腿四頭筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋で構成されますが、大腿直筋以外の筋は股関節より下から膝下に伸びます。大腿直筋は、股関節の上から膝関節の下まで伸びているので、2つの関節をまたぐ2関節筋です。だから、膝だけでなく股関節の屈曲にも作用します。
股関節の角度の違いによる発揮筋力の変化
股関節の角度の違いによる発揮筋力の変化
大腿直筋は屈曲10〜30°で大きな屈曲トルクを有し,伸展域や深い屈曲域ではトルクが小さくなった。一方,腸腰筋は深い屈曲域で強い力を発揮し,伸展域でもトルクは維持された。また,ハムストリングスは屈曲域で大きな伸展トルクを発揮するが,伸展につれて急激に小さくなり,伸展域では大殿筋下部線維が主動筋となることがわかった。内転筋は伸展域で屈筋,屈曲域で伸筋になる筋が多かった。
小栢らによる報告より引用
大腿直筋は、股関節の屈曲角度が浅い10〜30°でよく働くと考えられます。
大腿直筋の特徴
- 大腿四頭筋の中で唯一の2関節筋
- 浅層の繊維は羽状構造をしていて速く力強い筋収縮に有利な形態をしている。
- 股関節と膝関節に作用する。
大腿直筋はなぜ硬くなりやすいのか?
大腿前面の2関節筋
大腿直筋は、太ももの前の筋肉では一番表層にあって、2関節筋でもあります。他の筋肉よりも長い筋肉なので、テコの原理を利用しやすく働かせやすいという面もあります。
内側広筋、外側広筋、中間広筋は膝関節の動きに主に作用しますが、大腿直筋は股関節の動きにも作用するので立ったり歩いたりする際に使う頻度が多くなります。他の筋に比べて使用頻度が多いんです。
体幹、股関節周囲筋の機能不全
股関節屈曲に作用する筋は、主に腸腰筋と大腿直筋になります。腸腰筋は大腿直筋よりも内側にある筋肉で意識して力を入れることは難しい筋肉です。大腿直筋は意識して動かすことができる筋肉です。そのため、意識して股関節を曲げようとした時に、大腿直筋は優位に働きやすくなります。
また、体幹や股関節周囲といったより近位にある筋肉の機能不全があることによって、良質なスタビリティーが得られずに大腿直筋が過剰に収縮してしまっている状況も考えられます。この場合は、体幹や股関節周囲筋の機能改善をして大腿直筋の負担を減らす必要があります。
いずれにしても、長くて細い大腿直筋を過度に使ってしまっていることが原因になります。
大腿直筋の硬さ、過緊張を改善する治療アプローチ
大腿直筋のストレッチ
腸腰筋、大腰筋の筋力強化
マッサージやストレッチをすることで、一時的に大腿直筋を緩めることは可能ですが、その硬さを作っている根本の原因を改善することができなければまた硬くなってしまいます。そうならないために硬さを作ってしまっている原因を解消することが大事になります。
根本の原因として多いのは、大腿直筋が腸腰筋よりも優位に働いているということです。大腿直筋>腸腰筋を、大腿直筋<腸腰筋に変えていく必要があるということです。腸腰筋がよく働いていくれれば、大腿直筋は楽に働くことができて、疲れにくくなるということです。
腸腰筋の概要
腸骨筋、大腰筋の二つに分かれます。
腸骨筋
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起始:腸骨内面の腸骨窩
停止:小転子
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大腰筋
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起始:浅頭 T12〜L5の椎体ならびに椎間板 深頭 全ての腰椎の肋骨突起
停止:小転子
神経支配:腸骨筋、大腰筋共に 大腿神経(L1〜L4)
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腸腰筋の特徴
- 股関節屈曲を行う最も重要な筋肉。
- 大腰筋は体幹から下肢に繋がる唯一の筋肉。
- 股関節の過伸展時には骨頭が前方へ脱臼しないように腸骨大腿靱帯、恥骨大腿靱帯とともに制動し支持する。
- 股関節屈曲制限、屈曲拘縮の因子となりやすい。
- 腸腰筋の拘縮は腰椎の代償的前弯を引き起こすので腰痛の原因となることがある。
筋線維密度は、筋線維型別に見ると大腰筋では赤筋線維が、 腸骨筋では中間筋線維がそれぞれ最も高く、 白筋線維の密度は低い。主として股関節の屈曲位の維持に働き、 それぞれ大凡上腕二頭筋に近い筋力を有し、歩行に当って腸骨筋は大腿の外旋にも働き、その傾向は女性で著しい。
長谷川らの研究より引用
さて、大腿直筋の硬さを改善するために、腸腰筋を鍛えていきましょう!
大腿直筋を緩めて腸腰筋を強化するエクササイズ
エクササイズは腸腰筋の中の大腰筋を主に狙って行います。大腰筋は、体幹と下肢をつなぐ唯一の筋肉なので大腰筋を鍛えることで体幹と下肢につながりが強化され身体をより楽に動かすことができるようになります。それが大腿直筋の硬さを緩めることにつながります。
背臥位 股関節屈曲エクササイズ
ポイント
- やや内転方向へ屈曲させるイメージ。(大腰筋は腰椎についているので腰椎に向かって)
- 膝の屈曲を意識させる。相反抑制を利用し大腿直筋の緊張を落とす)
- 最終屈曲位から始める。(腸腰筋は最終域で働きやすい)
座位にて体幹前傾エクササイズ
ポイント
- 前傾を保ちながら行う。(体幹だけ屈曲しても大腰筋は働かない)
- 股関節が深く屈曲するところまで行う。(腸腰筋は深屈曲で働きやすい)
- 膝は90°以上屈曲位で。(ハムストリングスの硬さがあると行いにくい)
ランジ動作 骨盤前傾を意識
骨盤大腿リズムと活動開始時点の結果から,同じ股関節屈曲運動であっても,骨盤後傾量が大きい場合は大腿直筋の筋活動開始時期が早く,骨盤後傾量が小さい場合は大腿直筋の筋活動が遅い傾向が認められたため,骨盤後傾量が大きいと大腿直筋が過活動すること,骨盤後傾量が小さいと腸腰筋の収縮が起きていることが推測される.本研究の結果より,骨盤大腿リズムにおける骨盤後傾量を減少させるためには,大腿直筋の過活動を減少させ,腸腰筋の活動を引き出すことの重要性が示唆された.今後は,上述の結果をさらに検証するために被験者数を増やして分析していく必要があると考える.
本島らの研究より引用
【大腿直筋】
大腿挙上時に骨盤後傾量が大きい方が大腿直筋の筋活動開始時期が早くなる。大腿直筋の硬さ、過緊張がある方に対して、
骨盤の前傾を促し腸腰筋の筋活動を増やすようなエクササイズをして、
大腿直筋の活動を軽減してあげると良い。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2017年11月27日
骨盤前傾位を促した方が、大腿直筋の活動を減らし、腸腰筋の活動を増やすことができるんですね。これを利用し、エクササイズを行います。
徒手で、骨盤の前傾を促しながら降り出し動作や立脚初期まで行ってもらいます。他動で骨盤前傾を促してあげるだけで患者さんの大腿前面に対する感覚は結構変わります。それだけ大腿直筋の負担が減っているということです。
最後に
簡単なエクササイズを行うだけで、太ももの前が楽になったっておっしゃる方がとても多いです。腸腰筋を優位に働かせることができるような運動療法を考えていくことは大事です。他にも腸腰筋を効かせるための方法はたくさんありますので色々試してみてくださいね。