理学療法士の三好です!関節可動域制限に対して筋の短縮ばかりにアプローチしていませんか?筋の短縮に対するアプローチだけでは関節可動域制限は改善されません。それでは筋肉の短縮以外にどのような制限がみられることがあってどのように評価、治療をしていけばいいのか。これを知っているか、知っていないかで患者さんの可動域制限を改善できるかできないかが左右されます。
各関節に共通する関節可動域制限の原因をまとめます。臨床で実践していくことで関節可動域制限の評価、治療の仕方が変わる方もいると思います。ぜひチェックしてみてください。
目次
関節可動域を制限する要素の分類
関節可動域を改善する時にこれらを組織別に評価できているかどうかが大事です。
- 筋肉
- 靱帯
- 腱
- 皮膚
- 脂肪
- 関節包
関節拘縮の病態
皮膚や骨格筋、関節包においては共通してコラーゲンの増生に伴う線維化の発生が認められること、ならびにこの病態が拘縮の発生メカニズに深く寄与する。
関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略 沖田 実より引用
筋性拘縮のメカニズム
【拘縮予防】
不動期間は1-2週でマクロファージの増加、筋繊維芽細胞の分化→繊維化
4週で低酸素状態が惹起され、繊維化の進行につながる。
痛みや固定により不動状態となっていても、筋収縮や電気治療によって血流を促進し低酸素状態を軽減する事が大事。
— 三好 裕也 (@yuyampt) 2017年12月26日
筋肉が原因の関節可動域制限
筋肉の中でもどこが原因となっているのかを考える
筋肉が原因の場合、筋肉の中でもどこに原因があるのかを評価する必要があります。
- 筋線維の短縮
- 筋肉の滑走不全
- 筋膜内のコラーゲン増生
- 隣接組織との癒着
筋線維(2関節筋)の短縮
2つの関節をまたぐ筋肉である2関節筋が短縮していると、関節の可動域制限となります。他動運動で関節を動かし最終域で運動方向と拮抗する筋肉の緊張が高まってくるのを確認しましょう。
筋肉の滑走不全、隣接組織との癒着
筋肉と筋肉の間に癒着がないかどうか、筋肉と隣接する組織に癒着がないかを確認しましょう。隣接する組織にと癒着していると筋肉に滑走不全が起きて筋肉1つ1つがうまく伸び縮みできない状態になります。
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筋膜内のコラーゲンの増生、繊維化
筋線維の短縮とは別に、筋繊維を取り巻く筋膜が硬くなっていることによって筋肉が伸び縮みしにくい状態となっていることも多いです。
筋繊維の短縮と併発していることが多いですが、どちらに対してもアプローチする視点を持って評価、治療を進めることが大事です。
筋束を形成している筋周膜ならびに個々の筋線維を直接包む筋内膜といった筋膜にコラーゲンが存在します。不動期間が続くと、筋膜に存在するコラーゲン線維が増生し、繊維化が進むことで筋膜が硬くなります。
生化学的検索によってヒラメ筋内のコラーゲン含有量を定量した結果,不動 1 週で対照群より有意に 高値を示し,不動 4 週は不動 1 週より有意に高値を示した。
関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略 沖田 実より引用
筋線維のどの部位に問題があるのかを把握する
筋肉の中でも線維のどこに問題があるか確認しましょう。筋腹なのか、筋腱移行部なのか、起始部なのか、停止部なのか。
靱帯が原因の関節可動域制限
筋肉だけでなく、靱帯による制限はよくみられます。靱帯がどのように走行しているかを把握して触診できるようにしておくことが大事です。最終域で靱帯のハリ感を確認できるようになると靱帯の影響で制限が起きているのか評価できるようになります。
靱帯による制限も筋肉同様、靱帯自体の問題なのか?隣接組織との癒着もあるのか?といった視点を持って考えながら評価、治療していきましょう。
関節原性拘縮と関節外性拘縮の鑑別
- 筋、腱のの短縮では、筋が新調される方向の骨運動が制限される。
- 関節包、靱帯の癒着、短縮では骨運動は他方向への制限が見られる。
他動運動を行い、最終域で筋を触診し緊張を確認する。緊張が軽度か認めない状態であれば関節包、靱帯による制限の可能性があると判断し関節の遊びを評価しよう。
皮膚が原因の関節可動域制限
筋肉や靱帯だけでなく、皮膚が原因で関節可動域制限となっている場合もよくあります。表層の組織の硬さはどうか?チェックしていますか?皮膚がカチカチになっていないか確認してみて左右差があるようであれば皮膚に対してアプローチしてみましょう。
皮膚の硬化
1ヶ月程度の不動期間では皮膚、筋といった軟部組織の変化による由来するところが大きいが、不動期間が2-3ヶ月に及ぶと軟部組織の影響よりむしろ関節構成体の影響が強く現れてくる。
岡本らの報告より引用
ラット膝関節を最大屈曲位で30日間外固定した後の伸展方向のROM制限は、皮膚を切開すると16.6%、ハムストリングスと腓腹筋の切除で42.0%改善。関節の不動によって生じたROM制限は皮膚や筋といった関節構成体以外の軟部組織の変化がかなりの割合で関与している。
市橋らの報告より引用
【膝伸展制限因子の割合】
皮膚 16.6%
ハムストリングス 32.5%
腓腹筋 9.5%
他 41.4%— 三好 裕也 (@yuyampt) 2017年11月27日
皮膚性拘縮の病態
皮膚組織の構成
- 表皮
- 真皮
- 皮下組織
真皮はコラーゲンが非常に密。皮下組織は脂肪組織を多く含みその間隙にコラーゲン線維が存在。
不動期間により皮下組織の脂肪組織は萎縮、消失すると、その間隙を埋めるようにしてコラーゲンが増生する。これは繊維化の発生を意味する。
不動期間1週から2週で脂肪細胞の占める割合は低値を示す。1週より2週、2週より4週の方が脂肪細胞の減少、線維性結合組織の増加が見られる。
脂肪が原因の関節可動域制限
軟部組織の中でも結構な割合で脂肪が硬くなっていることで関節が動きにくくなっているケースがあります。各関節周囲の脂肪体のある場所を把握して、脂肪体の硬さをチェックしておくことが大事です。
脂肪体の萎縮、コラーゲンの増生、繊維化
不動期間により脂肪細胞が萎縮して、コラーゲンが生成されます。間隙を埋めるために生じたコラーゲン生成による線維化によりその部位が硬くなっている状態になっています。
しっかりとコラーゲン線維をリリースしてほぐしてあげることが必要になります。
関節包が原因となる関節可動域制限
関節包の構成
標準理学療法作業療法学 解剖学 第2版より引用
- 線維膜
- 滑膜
線維膜の特徴
- 線維膜は骨膜の続きであり、強くて丈夫な密生結合組織からなり、神経線維を多く含む。
- 線維膜のコラーゲンは非常に密で、その線維束は関節包の長軸方向にほぼ平行な配列をなしていることから伸張性は乏しい。
滑膜の特徴
- 滑膜は、血管に富む柔らかな少量の疎性結合組織と内表面を覆う1、2層の滑膜表層組織からなる。
- 滑膜には脂肪細胞が存在し、コラーゲンはその間隙に認められる程度で、関節包の中でも伸張性に富んでいる部位である。
滑膜の脂肪細胞の萎縮、コラーゲン増生
滑膜には脂肪細胞が存在し、コラーゲンはその間隙に存在する程度ですが不動により脂肪細胞が萎縮しコラーゲンが増生します。それに伴って繊維化が進行して滑膜が硬くなります。
関節可動域制限の改善のポイント まとめ
- 関節可動域制限の原因となる組織とその特徴の把握
- 関節可動域制限は組織間の癒着も関与
- どの組織が原因となっているか鑑別する
- 鑑別できたらアプローチ
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